目次
日本における人手不足の現状
企業の「人手不足」とは、企業の経営を続けていく上で、必要な人員が十分に集まらず、事業が行えない、もしくは業務が滞ってしまう状況を指します。この状況が続くと、部署内の人間関係にも影響を及ぼしたり、負のループ(退職し人が減る→補填できるまで今までの人員で業務を遂行する→一人あたりの業務量が増える→体調不良者や職場に対して不満を持つものが増える→退職して人が減る)が発生するため、重要な経営課題の一つとなります。特に中小企業では、人的リソースが事業継続に直結するため、深刻な課題とされております。
厚生労働省が発表した「職業安定業務統計」によると、2009年を境に「建設業」「運輸業・郵便業」「医療・福祉業」「サービス業」の新規求人数は伸びを見せ始め、現在までも増え続けていることから、断続的に人材不足は発生していることが伺えます。
2013年を機に賃金(年収)が上昇してきていることもあり、日本全体の雇用者数は若干上向きを見せていますが、大企業以外は変わらず人材不足に悩まされており、すべての企業において人材不足の解決には至っておりません。
人手不足はなぜ起きるのか
なぜ人手不足は発生するのでしょうか。大きな理由としてはなんとしても「少子高齢化」です。また、そこから派生した「介護離職問題」、さらには「雇用の変化」「社会情勢の影響と人材獲得競争の激化」などが考えられます。
少子高齢化
日本は現在、諸外国と比較しても急速に少子高齢化が進んでおります。内閣府の出した「令和3年版高齢社会白書」によると、日本の総人口1億2,571万人中、65歳以上の人口は3,619万人で全体の28.8%、また将来働き手となる15歳未満の人口は1,503万人で約12%となっていることがわかりました。つまり、現在でも高齢者の増加は続いており、働き手は減り、各企業で慢性的な人手不足は発生していることがわかります。
総人口が減少する中で、今後も65歳以上の割合は上昇を続け、令和18年には33.3%で3人に1人となります。このことから、将来的に働き手は現在よりも減る一方と考えられます。
65歳以上の人口は令和24年(2042年)に3,935万人のピークを迎え、その後は減少に転じると言われています。
介護離職問題
少子高齢化の影響により、介護を必要とする人口も増加をしています。介護は、仕事と両立することが難しく、心身ともに負担も大きくかかるため、介護を理由に離職をする人も少なくありません。厚生労働省の雇用動向調査によると、2019年に個人的理由で離職した約579.3万人のうち、約10万人(男性・約2万人/女性・約8万人)は「介護・看護」を理由としています。近年、介護施設の充実化などにより、介護離職の総数は減少を見せますが、施設の利用には経済的な負担が大きいため、すべての人が介護施設へ入居出来るわけではありません。出産・育児による離職は20代〜30代前半にピークを迎えるため、職場復帰の手段も残されていますが、50歳を超えての介護離職は、再就職が難しく、そのままリタイアとなってしまうケースも多く見られます。
雇用の変化
従来の日本社会では、新卒で一括採用され、終身雇用制度で定年退職まで同じ会社で働くということが一般的でした。しかし、少子高齢化や働き方の多様化で、今までのこのシステムはほとんど機能しなくなってしまいました。
若い世代が少ない→新卒で十分に人が確保できない→人手不足の発生→既存従業員の負担増加→労働環境の悪化→早期退職・離職の発生→さらなる人手不足の発生→人材採用が難しく、補填ができない
このような負のループが発生しているのが、現状と言えます。
社会情勢の影響と人材獲得競争の激化
厚生労働省の発表する有効求人倍率は平成26度以降、1倍を下回った年はなく、常に求職者に対して求人が多い買い手市場ではありました。コロナ禍により、さらに有効求人倍率は大幅に落ち込みましたが、実際に企業側と求職者側、双方の立場から見たらどうでしょうか。求職者は自分の求める就業条件や、スキルに沿った仕事を選ぶ傾向があり、企業側は優秀な即戦力を求めます。この双方の条件は必ずしも一致するわけではありません。優秀な人材は、自分にとって好条件の企業を選びますので、企業間の人材獲得競争は激化していきます。また、コロナ禍が収束に向かい始め、緊急事態宣言も解除されはじめた2021年9月から再び求人をスタートさせる企業も増え始めたので、競争はさらに激化していく一方と予想されます。
人手不足が顕著な業種・業界とは
産業別の新規求人数などから見て、なかでも特に顕著に人手不足が見られる業界は「建設業」「運輸業・郵便業」「医療・福祉業」「サービス業」などが挙げられます。
建設業
建設業界では、現場の職人・監督が慢性的に不足している状況です。これは、現場の職人の高齢化による離脱、そして若年層の中にある「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージにより、新しい人材が確保できていない状況が影響していると思われます。
運輸業・郵便業
休日や休暇の確保が不安定だったり、将来に期待できないというイメージから、人材の確保が難しく、さらにコロナ禍によるECサイトの拡大などで需要が急速に増え、早急な人材を確保しなくてはならなくなったことも、人手不足に拍車をかけました。
医療・福祉業
医療業界は、コロナ禍の影響を直接的に受けた業界となり、「医療崩壊」という言葉が出たほど、医師や看護師の人材は極端に不足している状況となっています。福祉業は、建設業や運輸業等と同じく、ハードな肉体労働のイメージがつき、上述の通り少子高齢化の煽りを直で受けています。高齢者は増加する一方で、かつ労働人口は減っていく。さらに、専門の知識も必要とあり窓口が狭くなってしまっています。業界全体の給与水準が低いことも、人手不足を助長する結果になっています。
サービス業
飲食業や観光業などの各サービス業は、もともと慢性的に人手が不足している業界ではあったものの、コロナ禍のステイホームで大きな打撃を受け、人材難だけでなく経営難という問題も新たに発生しています。
パチンコ店で人手不足はなぜ起こるのか 〜ポジションと業務内容を改めて見る〜
サービス業に属しているパチンコ店では、慢性的に人手が不足していることが多い業界のひとつです。ここでは、アルバイトスタッフの業務内容を改めて振り返ることで、従業員に発生する離職に繋がる理由を見ていきたいと思います。
ホールスタッフ
主に遊戯中のお客様の対応や、遊戯台まわりの清掃を随時行います。自動計数機の普及により、お客様の接客がメインとなってきたポジションでもありますが、ドル箱を使用している店舗もまだまだ多く、出玉の上げ下げや、出玉計数はなかなかの重労働になってきます。いずれにしても休憩時間以外は、常に動いている肉体労働となり、はじめてパチンコ店で働いた者は、想像していたイメージとのギャップにより、早期退職が多く見られるポジションでもあります。
カウンタースタッフ
主に遊戯を終了したお客様の景品交換や景品の準備、店内備品の簡単な作成などがあります。台数が少ない店舗では、ホールスタッフと兼任するところもありますが、基本的にはその日担当となったスタッフが終日対応します。ホールスタッフのように、常に動きまることはありませんが、基本休憩時間以外は立ちっぱなしの業務になります。お客様と接することが多いポジションとなり、苦情や一方的な文句を言われることもあるため、体力面よりもメンタル面で追いやられて退職になってしまうパターンもあります。
清掃スタッフ
大型店舗を中心に清掃専属スタッフも在籍し、通路やレストスペース、トイレや灰皿清掃などを行います。稼働時間は開店前、営業中、閉店後と時間帯ごとに分けられており、年齢層も幅広く取りやすいポジションとなります。主婦層が空いた時間に入れるので、比較的募集も早く集まる部類ですが、閉店後の清掃に関しては、稼働終了が深夜帯になることもあり、電車やバスではなく、自家用車が使える人材や近隣住民に限られることがあります。
実際にあった退職理由
人の行動には何かしら理由があります。理由もなく出勤しなくなることはありません。退職するには必ずそこに理由があり、原因もあります。ここでは、パチンコ店向け人材派遣会社の担当が経験した、「パチンコ店アルバイトをしていたけど、辞めてしまった原因」を挙げてみたいと思います。
退職した本人に原因がある
・家族の介護をすることになった
・妊娠が発覚した
・採用されたが、勤務早々体調不良を起こし、お店に行きにくくなってしまった
・体調不良が長く続いてしまいお店に、連絡をすることが億劫になってしまった
・掛け持ち先のシフトが増えてきたため
・起きたら遅刻する時間で、連絡すると怒られるのが分かっていたので、そのまま行くのを辞めてしまった
・以前もパチンコホールで働いていたが、新しい店舗はルールが厳しくて辞めてしまった
・シフトが自分の希望通りにならず、希望休を出すと文句を言われたため(本人の我儘によるところが大きい)
退職した本人以外に原因がある
・上司や先輩のスタッフのインカムの言葉遣いが不愉快で一緒には働きたくないと思ったので
・以前もパチンコホールで働いていたが、新しい店舗はだらしなくて辞めてしまった
・制服が小さいサイズしかなく、用意が出来ずに入りたくても入れなかった
・思っていた希望休が取れなさそうだったので
・お客様のトラブル対応時に、怒鳴られてしまい怖くなって辞めてしまった
・稼働してから、家族や彼氏彼女などの周囲から反対されたので
・発熱したときに何度もPCR検査をするように指示されて、お金がかさんでしまうのが嫌で辞めてしまった
・仲間内感が強くて、中に入れなかったので辞めてしまった
・上司が従業員に対する愚痴を皆の聞こえるところで話しているのを聞いて嫌気が差してしまった
退職した本人に原因がある方の理由を見ると、「怒られ(るのが想像でき)て辞めた」が大部分を占めており、こちらに関しては防ぐための方法は「面接時にその子をしっかり見極め採用を判断する」というのが一番の対策になります。しかし、退職した本人以外に原因がある方の理由を見ると、改善の余地が十分にあるものばかりになります。今一度職場環境を見直してみてください。それだけでも、退職は防ぐことができます。
アルバイトの人材不足を解消する方法3つ
パチンコ店に限らず、アルバイトの人材不足を解消する方法として、今回は「職場環境の改善」「求人媒体のフル活用」「人材派遣の利用」をご紹介いたします。
職場環境の改善
人材不足を感じるのは退職者が多いからではないでしょか。どんなに人材を確保できても退職者が随時出てしまっては、常に募集はかけていないといけない状態になります。例えば、穴が空いている瓶に水を入れるとどうなるでしょう。もちろん水は下から抜けてしまいます。瓶を満タンの状態にするには、ずっと水を入れ続けなければなりません。人材もその状況になっていませんでしょうか。では、どうすればいいのでしょうか。簡単な話が、底を塞げばいいのです。つまり退職者を減らすために職場環境の改善をすることで、既存スタッフの退職者が減り、新しい人材も辞めないので、募集をする必要が結果的に少なくなるのです。もちろん、学生などのアルバイトですから、就職等で一定の期間で退職は発生します。その際はしっかり募集は掛ける必要がありますが、働きやすい環境であれば、新しい人材も辞めないので、常に募集をかけている状態はなくなります。
自社に合った求人媒体を活用する
自社に人材のご担当がいらっしゃる場合、求人媒体を積極的に利用していきましょう。現在は無料で使える求人媒体や、SNSでの求人などさまざまな方法で人材を募集することが可能ですが、求める人材(ターゲット)を明確にし、そのターゲットに合った求人媒体を利用していきましょう。また、求人を掲載する際は求職者目線で原稿を作成することも重要です。特に若年層は文字からの情報よりも、画像(動画)での情報を欲しますので、職場環境が伝わりやすい画像を掲載していきましょう。
時間に余裕がある場合、掲載原稿は2通り用意し、反響のあったものを継続、反響のなかったものは改良を加えて再び掲載し、随時ブラッシュアップを重ねていくABテストを行い、効果的な掲載文を探していきましょう。
また、応募があった場合はできる限り早くアプローチをしましょう。応募者は何社か同時に応募していることも多く、連絡が取れた時にはすでに他社に決まっていたというケースは非常に多いです。
人材派遣を利用する
自社で求人するにも人手も時間も足りない場合は、人材に関するすべてをプロの手に任せてしまうのも一つの方法です。欲しい人数をオーダーさえしてしまえば、あとは人材派遣会社がすべて手配をしてくれます。相場感としては、自社の基本時給+450円〜500円と、もちろん通常のアルバイト時給よりも高くなりますが、本来発生するであろう求人掲載費などは一切発生しないケースが多く、募集・面接・労務管理等はすべて人材派遣会社が行いますので、トータルで見るとコストも抑えられた上で、人材に関するほぼすべての手間や悩みは解決できます。
まとめ
人材不足には何かしらの原因があります。また、その原因はアルバイト自身にあるケースもありますが、自社にもあると考えてみましょう。人手不足は退職者が多いと発生します。つまり、職場環境改善を行うことで、退職者が減り、結果として人材確保は最低限の数で済み、入ったばかりの新人も早期退職しにくい環境となるのです。もちろん、それでも人材は不足する場合はあります。その際は、自社で対策を取り組める場合は求人のPDCA(P:PLAN(計画)→D:DO(実行)→C:CHECK(評価)→A:ACTION(改善)→P・・・)をしっかりと回していきましょう。また、求人に関するリソースが無い場合や、手間を省きたい場合は、人材に関するすべてをプロにまかせてしまう「人材派遣」も視野に入れてみましょう。
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